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2024年3月25日月曜日

blog20220712 脱施設化ガイドライン案

 2022/07/12

 2022年5月末、国連障害者権利委員会は「緊急時を含む脱施設化に関するガイドライン(案)」を公表した。ガイドラインは、障害者権利条約第14条(身体の自由及び安全)の指針と第19条(自立した生活及び地域社会への包容、いわゆる脱施設化条項)の一般的意見5号を補完するものである。6月末まで、パブリックコメントを実施していた。

 この脱施設化ガイドラインには、どんな重い障害があっても自分の好きな地域で自分らしいくらしをどのように構築するかが書かれている。確かに私たちの生活は現在、多くの国々と同様、施設を容認する文化が強まるなかにあって、生活に制限が多い。しかし本ガイドラインが採択されると、暗い夜にキラッと光る星が灯る。健常者社会をも説得し、みんなでこの星に向けて力強く歩き出せば、誰もが享受できる地域での自立した生活が実現できる。

 さあ動き出そう!

 

★パブリックコメント詳細は

https://www.ohchr.org/en/calls-for-input/calls-input/call-submissions-draft-guidelines-deinstitutionalization-including

 

★ガイドライン案

上記ウェブページ「Draft Guidelines on Deinstitutionalization, including in emergencies
English 」を押してダウンロード

 

【脱施設化ガイドライン案の主な内容】(括弧内は原文の段落番号)

※意訳している部分が多いことをご了承ください。

 

■入所施設とは

·        ガイドラインでは入所施設の特徴として、次の要素を挙げ(15)、施設収容を施設名・形態だけではなく要素の有無の問題とする

o   介助が必要にもかかわらず他人と介助者の共有を強いられる、介助者がいない、介助が制限される

o   地域における自立した生活から隔離、分離

o   日々の判断を自由にコントロールできない

o   誰と住むかを決めることが出来ない

o   そのひとの意思、嗜好と関係なく日課が厳格に決まっている

o   特定の管理者のもとでの同じグループおける同じ活動

o   サービス提供における温情主義的な働きかけ

o   生活様式の管理

o   同じ環境に障害者が不均衡にいる

·        あらゆる形態の入所施設は、脱施設化の改革の対象だ。1つまたは1つ以上の入所施設の特徴があれば、それは地域支援と呼べない。(16)

 

■施設収容の有害性

·        施設収容は障害者に対する差別的な実践であり、事実上の法的能力の否定につながる(6)

·        施設収容は第19条の脱施設化条項に直接否定するものだ(7)

 

■入所施設を終わらすために

·        締約国は、施設収容のあらゆる形態を廃止し、入所施設への措置を終わらせ、入所施設への投資を慎むべきである。また施設収容は「障害者の保護形態」、「選択」として考慮すべきでない。第19条で述べられている権利の行使は公衆衛生上の非常事態を含む緊急的な状態でも中断されない(8)

·        施設収容を永続化することは正当化されない。締約国は、地域支援・サービスの不足、貧困、要望などを入所施設の維持の理由に使うできない(9)

·        脱施設化プロセスは、公営と民営両方で、障害者と施設収容のあらゆる形態、隔離、分離を終わらすために行なわれならない(11)

·        締約国は、一人ひとりに施設を退所する機会を与えること、あらゆる拘束を取り消すこと、非自発的な拘束を禁止する即時的な行動をとらなければならない(13)

 

■第19条について

·        締約国は、自立した生活及び地域の包容は、条約第19条と一般的意見5号に沿って入所施設の外にある全ての種類の生活資源に言及していると認識すべきである。規模・目的・性格にかかわらず入所施設は条約に準拠するものとしてみなされない。(19)

·        自立した生活及び地域の包容は、完全な法的可能性、住宅へのアクセス、彼らの生活を再びコントロールできる支援やサービス機会が必要となる。締約国は、入所施設から退所するための多数の選択肢を用意し、彼らの判断を実現できるための支援を使えるように保障すべきである。(20)

·        第19条で言及している「住宅サービス」は入所施設の維持を正当化するものとして使われるべきでない。住宅サービスは、障害者の十分な住宅の権利を行使するための、平等で非差別を目的とした地域に基づく支援やサービスを意味する。(32)

 

■地域に基づく支援

·        締約国は、遅延することなく、地域の個別支援やインクルーシブで主流化したサービスの幅を拡充することを優先しなければならない。(21)

·        自立した生活及び地域の包容の中心的な要素は、全ての障害者が彼らの選択に基づき、日常生活や社会参加を行なう際に必要な支援があることだ。その支援は多様な選択肢を通じて、個別的で個人に向けたものでなければならない。障害者は、地域に基づく支援の提供を選ぶこと・管理すること・終わらすことにおいて法的能力を行使することができる。(22)

·        十分な障害者のための住宅や標準的な生活費を提供することは優先事項だ。締約国は施設退所者に対し、家賃補助を通じて安全でアクセシブルな手頃な地域の住宅を保障すべきである。退所者を集合住宅様式、施設の隣、医療支援付きの住宅に集めることは、第19条と矛盾する。住宅は精神医療システムあるいは入所施設が管理するサービスから独立されなければならない。(31)

 

■資金と資源の割り当て

·        締約国は、入所施設を建てることや改良するために公金を使うことをやめるべきで、すぐに公金の投資先を条約に合うようにしなければならない。(27)

·        入所施設への投資は正当化されず禁止すべきである。その投資は緊急措置として、入所者の退所や自立した生活のための適切な支援の提供に向けなければならない。(28)

·        締約国は、十分な公金をインクルーシブな地域支援制度とインクルーシブで主流化したサービスの維持に割り当てるべきである。(30)

 

■障害児について

·        施設収容は、障害児の保護の形態として考慮すべきではない。障害児のあらゆる形態の施設収容は分離形態とみなし、彼らに有害であり条約に適合しえない。全ての子どものように障害児は、かぞくと過ごす権利があり、地域でかぞくと一緒に生活し育つ必要がある。(12)

·        障害児にとって、脱施設化は家庭生活の権利の保護に直結しなければならない。子どもにとり地域の包容される権利の中心は、家庭で育つことだ。従って子どもにとって、「入所施設」は家庭にもとづかない措置である。大規模・小規模グループホームにおける措置はとくに子どもには危険である。締約国に施設介護制度を維持することを正当化し奨励する国際基準は、条約に一致せず、更新しなければならない。国際基準の調和は、障害児の保護に欠かせない。(42)

·        (中略)数百万の障害児が入所施設・施設介護のままである。国際的寄付は、孤児院・施設介護・グループホーム・子ども村を支援するべきではない。障害児はしばしば改革の外に置かれる。改革は、条約にそって家庭生活の権利を確実なものにするためにおこなわれる必要がある。(44)

·        実際の障害、あるいは障害があろうという見立て、貧困、民族、その他の社会的所属に基づいて施設に入れられた子どもたちは、施設措置のために障害を発症する可能性が高い。したがって、障害のある子どもとその家庭への支援は、すべての子どもに対する主流の支援に含まれるべきである。子どもや思春期に対するピアサポートは、地域の完全なインクルージョンのために不可欠である。(44)

·        短期間の入所措置でも、大きな苦痛とトラウマ、感情的・身体的障害が生じる。子どもたちの施設収容を防ぐことは、優先事項でなければならない。経済的な支援やその他の支援を伴う家庭に基づく措置は、障害児のために創るべきである。(45)

·         条約第23条の4は、障害に基づく子どもと親の不当な分離を禁止する。締約国は、障害のある親に対し、子どもを育てるために必要な支援と合理的配慮を提供し、子どもが施設に収容されることを防ぐべきである。(46)

·        障害のある子どもは、すべての子どもと同様に、障害に基づく差別なしに、自分に影響を与える事柄について意見を聴かれ、その意見が十分に考慮される権利を有し、このために年齢および障害に応じた支援を受けることができる。障害のある子どもが自分の意志や好みを表明し、自分に影響を与える個人的な選択や政策の決定に関与できるように、支援や調整が図られるべきである。親、親族、介護者は、障害のある子どもが自分の意見を表明することを支援する上で重要な役割を担うことができ、子どもの意見を考慮すべきである。(47)

·         子どもは施設での生活を「選択」することはできない。障害のある若者は、第19条に沿って、どこで誰と暮らすかを選択する機会を与えられるべき。一般的意見第5号で自立した生活環境は「あらゆる種類の入所施設の外での生活環境」と定義されていることを考慮しなければならない。(48)

·         締約国は、障害のある子どものために、必要に応じて、個人的支援およびピアサポートを含む地域支援サービスを開発し、その利用を確保すべきである。教育制度はインクルーシブであるべきである。締約国は、障害のある子どもを普通学校に入れ、子どもを施設に入れる圧力の増大につながる分離教育を防止し回避すべきである。(49)

·         子どもの施設収容を防ぐために、かぞくおよび子どもにとって利用しやすい情報が提供されるべきである。それは、学校、コミュニティセンター、医師のオフィス、親のリソースセンター、宗教団体を通じて、複数の使いやすい形式で提示されるべきである。かぞくが子どもを施設に入れるよう勧められたりするのを防ぐには、障害の人権モデルに関する専門家のトレーニングが重要である。(50)