1.定員内不合格とは
定員内不合格とは、高校入試において入学希望者数が定員未満であるにもかかわらず、障害を理由として入学を認めないことです。ただし入学を認めない理由は、一見障害と関係ないように説明されます。例えば「入学試験である一定の点数が取れていない」、「高校教育を受けるだけの能力・適性がない」等です。
2.高校の適格者主義
定員内不合格を正当化する根拠は、1963年に出された文部省の通知です(「公立高等学校の入学者選抜について」)。その別紙「公立高等学校入学者選抜要項」では、高校入試における選抜方針について次のように述べています。
1 高等学校は、高等学校教育の普及およびその機会均等の精神にのっとり志願者のなるべく多数を入学させることが望ましいが、高等学校の目的に照らして、心身に異常があり修学に堪えないと認められる者その他高等学校の教育課程を履修できる見込みのない者をも入学させることは適当でない。
高等学校の入学者の選抜は、中学校長から送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として、高等学校教育を受けるに足る資質と能力を判定して行なうものとする。
また1984年の文部省の通知「公立高等学校の入学者選抜について」では、次のように述べています。
1 高等学校の入学者選抜は、中学校長から送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として、各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるに足る能力・適性等を判定して行うものとする。
これらは、いずれも高校を卒業できないと考えられる子どもが入学するべきではないという考え方(=適格者主義)に基づく者です。この適格者主義は、障害のある子どもが高校で障害のない子どもと共に学ぶ権利を奪う方便となっていて問題です。
適格者主義は、近年学習指導要領でも採用されなくなってきています。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説では、高校の目標が「義務教育の成果を発展・拡充させること」にあるため「生徒の実態に応じ義務教育段階の学習内容について学び直し、その成果を発展・拡充させるため」に、「学校設定教科・科目を高等学校の教科・科目として開設すること」は、「高等学校教育の目標に適合するものである」としています。これは学習指導要領が、子どもに合わせて学校が変わる/教育内容を変えるという考え方をとっていることを示しています。この考え方は、障害のある子どもが高校で共に学ぶ権利を保障するうえで重要です。
3.定員内不合格の現状
2023年度には47都道府県中38府県で定員内不合格者がいました。同年度に定員内不合格者数が0人だった都道府県は、次のとおりです。
出典:NHK「“障害に関係なく学びたい”高校進学目指す脳性まひの男性」2024年2月5日(https://www.nhk.or.jp/shizuoka/lreport/article/005/70/)
なかでも東京都と大阪府は、教育委員会が定員内不合格を出さない方針を出しています。
だた、2023年度も各地で定員内不合格が出されました。例えば静岡県立高校を受験した芹澤怜誠さんです(https://www.nhk.or.jp/shizuoka/lreport/article/005/70/)。芹澤さんは、2022年度から2年連続高校受験をして、二度も定員内不合格で高校進学を阻まれています。こうしたことは、静岡県の他、熊本県、千葉県等でも確認されています。高校で学びたい子どもの学習権が保障されないことは、問題です。